同じ😊なのに違う？絵文字の仕組みとそれを支えるUnicodeの話

はじめに

絵文字（Emoji）😀の歴史からテキストコミュニケーションについて考えよう🎉 | ブログ | 株式会社リメディア

絵文字は今や、SNSでもビジネスチャットでも欠かせない存在です。でも、そもそもいつ・どんな経緯で生まれたのでしょうか❓本記事では、絵文字（Emoji）の誕生までの歴史をたどりながら、テキストコミュニケーションがどのように進化してきたのかを探ります💡

https://remedia.co.jp/blog/posts/2025-10-emoji-history/

先日公開した記事では、絵文字の誕生とその広がりを振り返りました。では、私たちが毎日使っている絵文字が、どんな仕組みで表示されているのかご存じでしょうか？

同じ「😊」でも、iPhoneとAndroidで少し顔が違ったりしますし、Windowsでは国旗が表示されない（！？）といった問題もあります。

実は、絵文字の裏には「文字コード」という緻密なルールがあり、それを支える国際的な技術標準「Unicode」の存在があります。

この記事では、絵文字の見た目がどう決まり、なぜ環境によって違って見えるのか。そして、「emojiは文字である」という意外な視点から、絵文字の奥深い仕組みをのぞいてみましょう！

emojiは「文字」です

絵文字は見た目のとおり「絵」なので、私たちは「イラスト」や「アイコン」のように感じています。でも、実は絵文字は画像ではなく「文字」 としてコンピューターに扱われています。

コンピューターは、「A」「あ」「😊」といったあらゆる文字を、数値（コード）として記録しています。たとえば「A」は「U+0041」という番号で表されます。この「文字と番号の対応表」を定めているのが、国際規格のUnicode（ユニコード）です。

• Unicode：U+1F600 → 😀（にこやかな笑顔）
• Unicode：U+1F44D → 👍（親指を上げた手）

上記のように、絵文字はそれぞれUnicodeで定義されたひとつの文字なんですね。こうした文字コードの仕組みがあるから、これから解説する「複数の絵文字を組み合わせる」絵文字の技術が成り立つのです。

絵文字シーケンスとは？1文字なのに複数の文字でできている！？

スマートフォンやパソコンで表示される絵文字は、一見すると「ひとつの文字」に見えます。でも実は、その中には複数の文字コードが組み合わさっているものが多いです。これが「絵文字シーケンス（emoji sequence）」と呼ばれる仕組みです。

家族の絵文字「👨‍👩‍👧‍👦」を例に見てみましょう。この絵文字は、ひとつの記号に見えますが、実際には次のように複数の絵文字が「結合」して表示されています。

これらが特別な「結合子」と呼ばれる文字（ゼロ幅接合子：ZWJ（Zero Width Joiner））でつながることで、「ひとつの家族の絵文字」として表示されているのです。

ZWJは、「この絵文字たちをつなげて、ひとつの見た目にしてね」と指示する「目に見えない接着剤」のような役割をします。

絵文字シーケンスのおもしろい結合例

「人物」絵文字に特定のアイテムを組み合わせることで、職業を表すことができます。

絵文字	構成	意味
👩‍💻	👩 + 💻	女性エンジニア・プログラマー
👨‍🍳	👨 + 🍳	男性シェフ
👩‍🚀	👩 + 🚀	女性宇宙飛行士

家族の絵文字と同じように、恋人の絵文字も複数の人物＋ハートなどを結合しています。

絵文字	構成	意味
👩‍❤️‍👨	👩 + ❤️ + 👨	男女カップル
👩‍❤️‍👩	👩 + ❤️ + 👩	女性同士のカップル
👨‍❤️‍💋‍👨	👨 + ❤️ + 💋 + 👨	キスをする男性同士のカップル

国旗や肌の色の違いも同じ仕組み！

この仕組みは、国旗や肌の色の違いを表す絵文字にも使われています。日本の国旗「🇯🇵」は、「JP」という国コードを表す2つの文字からできています。

この「🇯」と「🇵」は一見アルファベットに見えますが、地域指示記号（Regional Indicator Symbol）というもので、それをフォントが「🇯」と「🇵」なら「日本の国旗🇯🇵だな」と解釈して表示させているのです。

同じように、他の国旗も以下のように国コードによって表示される絵文字が決まります。

• 🇺🇸 = 🇺 + 🇸（US → アメリカ）
• 🇫🇷 = 🇫 + 🇷（FR → フランス）

つまり、国旗絵文字は2つの文字の組み合わせで1つの旗を描いているんですね。

肌の色を変えられる絵文字も、同じように「組み合わせ」で表現されています。「スキントーン修飾子（Skin Tone Modifier）」という特別な文字を追加することで、絵文字の肌色が変わります。

この「 🏽」の部分が、肌の色を指定する修飾子（modifier）です。Unicodeでは5種類のトーン（明るい肌〜濃い肌）に対応しており、どの肌の色でも同じジェスチャーを使えるようになっています。

ここまで、さまざまな用語が出てきたので、おさらいしておきましょう。

用語	意味
Unicode（ユニコード）	世界中の文字や絵文字に番号（コード）を割り当てる国際規格。どの文字をどの番号で表すかを決めている。
絵文字シーケンス	複数の文字コードを組み合わせて、1つの絵文字として表示する仕組み。例：👨‍👩‍👧‍👦（家族）
ZWJ（ゼロ幅接合子）	絵文字同士を「ひとつに結合する」ための見えない文字。接着剤のような役割を持つ。
スキントーン修飾子	絵文字の肌の色を変えるための追加コード。例：✋🏽=✋+ 🏽
地域指示記号（Regional Indicator Symbol）	国旗を表すための特別な文字。2つを組み合わせて国を示す。例：🇯+🇵=🇯🇵

デバイスやOSによって見た目が異なるのはなぜ？

同じ「😊」でも、iPhoneとAndroidで少し表情が違ったり、Windowsでは色味が変わって見えたりすることがあります。実はこれ、単なる「デザインの違い」ではなく、絵文字が決まる仕組みそのものに理由があります。

Unicodeが仕様を決める

ここまで紹介してきた「Unicode」という規格は「Unicode Consortium（ユニコードコンソーシアム）」という国際的な団体によって管理されています。

この団体が「どんな絵文字を追加するか」「どんな意味を持たせるか」を決め、世界共通の「文字コード」として登録します。

たとえば🦄（ユニコーン）が登録されると、以下の仕様書のような情報を各社に共有します。

項目	内容
名称	UNICORN FACE（ユニコーンの顔）
コードポイント	U+1F984
カテゴリー	Animals & Nature（動物と自然）
意味	伝説上の動物。頭に一本の角を持つ馬のような姿。

ただ、Unicodeは「こういう絵文字を使っていいですよ」という仕様だけを定めているので、実際の見た目（デザイン）はまだ決まっていません。

デザインは各プラットフォームが作る

Unicodeで絵文字が追加されると、Google・Apple・Microsoft・X（Twitter）などの各プラットフォームが、自社のスタイルに合わせた絵文字デザインを制作します。

それぞれに「絵文字デザインチーム」や「フォントチーム」があり、次のようなプロセスで新しい絵文字が生まれます。

1. Unicode Consortiumが新しい絵文字を正式採用
2. 各社が仕様に基づき、独自のデザイン案を制作
3. 社内で文化的・表現的なチェックを経て採用
4. OSやアプリのアップデート時にフォントとして配布

このような流れなので、見た目がバラバラなのは、この開発の仕組みによるものです。つまり、「どんな絵文字を使えるか」はUnicodeが決め、「どんな絵にするか」は各プラットフォームが決めます。

そのため、同じコードでも見た目が違うのです。これは仕様の不統一ではなく、むしろ「絵文字という文字の多様性」を許容する仕組みなんですね。

各プラットフォームごとの絵文字の特徴は以下のようになります。

• Apple：立体的で陰影のある3D風のデザイン
• Google（Android）：よりカラフルでフラットなデザイン
• Microsoft（Windows）：近年は柔らかい3D風「Fluent Emoji」に刷新
• X（旧Twitter）：独自のオープンフォント「Twemoji」を採用

引用：「😀」にっこり笑う 絵文字 — 意味・使い方・コピペ

Windowsで国旗が表示されないのはなぜ？

Windowsでは「🇯🇵」などの国旗絵文字が 「JP」文字 のまま表示されることがあります。これはバグではなく、Windowsが国旗の絵文字フォントを実装していないためです。

Windowsのフォント（「Segoe UI Emoji」など）は、「地域指示記号の組み合わせ」を単なる文字列として扱っているため、国旗の絵として描画しないのです。

この点については、推測として以下の記事で解説されていますが、色々複雑な事情があるようで…。

「なぜMicrosoftがWindowsのシステムフォントに国旗の絵文字を入れていないのか」という問題に突き当たりますが、ガイヤー氏は「政治的に、特定の『国』が存在すると認める立場なのだと受け取られては困るから」だと推測しています。

引用：国旗の絵文字がWindowsでうまく表示されないのはなぜか？

一方、Apple（iOS/macOS）やGoogle（Android/Chrome）は、「地域指示記号のペアを国旗として描く」というレンダリングルールをフォント側でサポートしています。そのため、OSによって国旗絵文字の見え方が異なるのです。

ちなみに、Windowsを使っていても、他のサイトでは国旗が表示されることもありますが、それはそのサイトが独自の絵文字フォント（Twemoji、Noto Emojiなど）を使って表示しているためです。

この絵文字フォント問題は、当ブログサイトでも改善を検討しているところです。

まとめ：絵文字は「文化」と「技術」の交差点

ここまで見てきたように、絵文字は単なる「記号」ではなく、言語の一部として緻密に設計されています。あらためて、この記事で紹介したポイントを整理してみましょう。

• 絵文字は画像ではなく、Unicodeで定義された「文字」 である
• 絵文字シーケンス（ZWJなど）によって、複数の文字を1つの見た目にまとめている
• 国旗や肌の色の違いも、文字コードの組み合わせで表現されている
• OSやフォントの違いによって、絵文字の見え方が変わる

こうして見ると、絵文字は単なる飾りや感情表現ではなく、テキストコミュニケーションを支える言語的・技術的インフラでもあることがわかります。

次に誰かとチャットするとき、その絵文字の裏側には「国際規格」と「設計思想」がある…そんな視点で眺めてみると、いつもの「😊」や「👍」が少し違って見えるかもしれませんね。